カレーと憂鬱と時々電卓

元アーケードゲーム廃人で恐縮ですが、たまにカレーのことも書きます。

漫画「ONE OUTS」から学ぶ社労士試験合格率の正しい見方

 私がはじめての社労士受験に失敗した後、予備校の先生に「3年やり続ければ必ず合格する」と言われ、二回目の受験を決意しました。幸い1年半で合格できたのですが、実際運が良かったのだと思います。

 

 今年の社労士試験の合格率は5.4%だったらしいですが、昨年の合格率が7.0%だったことを踏まえると随分難易度は上がったんだなと感じました。どこかの予備校のサイトによれば、司法書士試験の合格率は3.4%、弁理士5.9%、行政書士8.6%らしいので、これらの数字を考慮しても5.4%という合格率は普通に難関資格だと言えます。ここまでくれば働きながら適当に勉強して取得出来る資格ではないでしょう。

 

 しかし、合格率が下がった理由はさておき、これほどの難関になった社労士受験に何年も費やすことがどれだけ意味のあることなのでしょうか。

 

 

  まず社労士資格の取得で人生がイージーモードになることは考えにくいです。乱暴な言い方をすれば、社労士の仕事なんて誰にだって出来るため、中小企業では通常社長なんかが適当に処理しています。ただ大企業とかになると処理量がかなり多くなるためアウトソーシングしています。つまり社労士に対する需要は大企業が中心で、中小企業が圧倒的大多数の割合を占める日本ではこの業界の市場規模はお世辞にも大きいとは言い難いのです。

 

 またサービスの差別化が難しいのも問題です。1号業務、2号業務、3号業務とある社労士業務の中でも、社労士の独占業務は1号業務と2号業務だけです。1号業務や2号業務は資格関係書類の作成や提出代行、就業規則作成、年度更新等なのですが、これらは残念ながら標準化された仕事なので、プロダクト自体で差別化うんぬんとかいうレベルではありません。

 

 価格だって一応相場みたいなのがあるらしいので、独立開業して食べていくにはそれぐらいの値段が妥当なところなのでしょう。また価格破壊なんかは業界全体が疲弊する可能性すらあるため、あまり触りたくないところです。

 

 流通に関しても大手の社労士法人が圧倒的優位で、地方の社労士事務所が荒稼ぎするにはかなりの資本力が必要です。したがって差別化なんてせいぜいプロモーションにおける行政書士や税理士等とのマルチライセンスぐらいでしょう。(ただし実際はかなりの数のマルチライセンス所有者がおり、もはやそれすらコモディティ化しつつあります)

 

 さらには労働法に関する世間の興味も肌で感じるものがあります。最近では労働基準監督官の仕事がテレビドラマ化するほどです。存在がメジャーになるということは競争相手が増える要因になるので、ますます新規顧客開拓が難しくなります。その結果需要のある大企業は大手の社労士法人と手を組み続けることになり、地方の社労士事務所の所長は既存の人脈に頼るしかなくなるのです。

  

 

 こうした背景の中、話を試験に戻しますと、この試験はけっこう難しいです。なぜなら運の要素が絡んでくるからです。択一式での安定したスコアがあればもちろん合格の可能性は上がりますが、(ちなみに安定というのは45点とかのギリギリのラインではなくて55点前後のことです)択一式という中ボス撃破後、選択式というラスボスが出現します。この選択式では択一式でカバーした知識量に加えて国語力っぽいものが必要となります。当然、膨大な範囲のもと出題されるため、ほとんどの受験生が知らないような問題も出題されます。これはもう学生時代に培った国語力っぽいもので解決するしかありません。しかしそれでも解けない問題もあります。そうなればもう両手を挙げて救済を待つしかありません。これが運の要素といわれる所以です。この運の要素を考慮して予備校の先生は「三年続ければ」と言ったのかもしれません。

 

 

   しかし人生の時間は有限です。三年を捧げて神頼みの試験なんてもう難関とかのレベルではありません。それこそ合格後にそれなりの回収が見込めなければならないはずです。

 

 

 

 漫画ONEOUTSで渡久地東亜はこう言いました。

 

「今までのアイツは運まかせのサイコロ振りさ

6回振れば1回は1が出るはずとただ漠然と1の目を待つサイコロ振りさ

たとえ100回連続で違う目が出ても

100回続けて1が出なかったんだから次こそは必ず1が出る』

と言いながらやっぱりサイを振るサイコロ振りさ

だが勝負とはそういうものじゃない

1001が出なかったら

サイコロのイカサマを疑うべきなのだ

そして100の負けを取り返すために

自分に有利なイカサマサイコロとすりかえるべきなのだ…

それが勝負の世界自分が動かなければ何も変わらない

動けば必ず何かが変わる」

 

   競争優位は外部環境に依存するというのが言いたいだけで、なにもこの試験がイカサマだということを言っているのではありません。

 

    ただ今年の数字を見ていて、「三年続ければ」と言われても渡久地東亜先生はおそらく続けないでしょう。勝算のないゲームに貴重な自己資源を投下する必要はありません。この合格率を維持したまま現状と変わらない業務範囲が続くなら、他のゲームを検討するべきだと思います。